クラシック音楽鑑賞記録(2007年6月〜8月)

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2007/08/12(日) ミューザ川崎 神尾真由子 & 東京交響楽団

2007/08/05(日) ミューザ川崎 ミューザ川崎のNHK交響楽団

2007/07/20(金) ミューザ川崎 宮本文昭の東京都交響楽団

2007/07/20(日) NHKホール N響「夏」2007公演

2007/06/29(金) NHKホール NHK交響楽団 アシュケナージ最終公演

2007/06/23(土) NHKホール 名演奏だったN響 & 清水和音のラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番

2007/06/13(水) 東京文化会館 NHK交響楽団 東京文化会館6月公演


CONTENTS

神尾真由子 & 東京交響楽団


一昨日(12日)、ミューザ川崎で開かれている「サマーフェスタカワサキ」の東京交響楽団フィナーレコンサートへ行ってきました。指揮は大友直人。ヴァイオリンは先日のチャイコフスキー国際コンクールで優勝した神尾真由子。チケットは完売。

演目(※はアンコール曲)
ベルリオーズ/劇的物語「ファウストの劫罰」より“ハンガリー行進曲”
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲 ペレグリ/クリザリッド
  〜休 憩〜
サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調
ラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
※ビゼー/歌劇「カルメン」前奏曲

演目はすべてフランス人作曲家をフィーチャーしたものばかりで、「おフランスよ」というちょっと気位が高くてお上品な曲のオンパレード。(笑)で、演奏はというと、前半の3曲はすべてが凡庸。とにかく、東京交響楽団の弦がいただけない。私にとってオーケストラの最大の魅力である、弦の厚みや深みが全然伝わってこない。今回の演目はフルートなどの木管をクローズアップしていて、弦が活躍する場は少ない。それにしても、オケを支えるチェロやヴォオラの音色が頼りないのである。前半終了時の客席からの拍手もさほど大きくなく、拍手が止みそうになったので指揮者の大友直人があわてて舞台袖から出てくるぐらいであった。私も正直帰ろうかと思ったぐらいだったが、それでは何のために来たのかわからないので、休憩時にビールを一杯ひっかけて、後半に期待した。

神尾真由子は1986年大阪生まれの21歳。小学校4年生のときに第50回全日本学生音楽コンクール全国大会小学校部門で第1位を獲得。翌年わずか10歳でシャルル・デュトワ指揮のNHK交響楽団と共演してソリスト・デビュー。その後、数多くの国際コンクールに出場すると共に世界各国の有名オーケストラと共演している。使用楽器はサントリーが貸与している1727年製作アントニオ・ストラディヴァリ(ストラディヴァリウス)。

神尾は淡いピンク色のドレスで登場。今回がコンクール終了後初の演奏会。つまり結果的に凱旋公演になった。場内からは演奏前にもかかわらず割れんばかりの拍手。期待のほどが窺える。

第1楽章冒頭、太く低い音がミューザ川崎にサラウンドして響きわたる。う〜ん、楽器が違う。演奏が違う。ただ、コンクール終了後初の演奏会ということもあり、緊張しているせいか音に少しブレがある。それでも彼女の奏でる音色は観客を、そしてオケを完全に凌駕してしまう。やはり世界のコンクールを席巻した音色は違うと感心せざるをえない。

第2楽章。神尾のヴァイオリンは伸びと張りのある音をビシビシと奏でていく。それはノリのきいた着物や浴衣に袖を通したときに感じる、引き締まった気分を味わうかのような心地良さである。彼女は癒しの世界を描くではなく、張りつめた緊張した世界を築いていく。

第3楽章。今度は一転して神尾は大友直人の指揮と呼吸を合わせながら、オケと協調してサン=サーンスの世界を描いていく。見事です。とても21歳のうら若き女性とは思えない。彼女にとってサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲を今回は初めてとのこと。それでも、観客とオケを席巻した演奏だった。末恐ろしきヴァオリニストである。

それにしても、日本にはいったいどれだけの女性ヴァイオリニストの名手がいるのだろうか。諏訪内晶子、千住真理子、竹澤恭子、五嶋みどりなどといったキャリア15年以上のベテラン(失礼!)から、川久保賜紀、庄司紗矢香、そして神尾真由子という若手までいる。今や日本は世界に冠たる女性ヴァオリニスト王国になったようである。

さて、この日最大の拾い物は東京交響楽団の首席フルートの甲藤さち。前半のドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』でもその演奏はひとり際立っていたが、後半のラヴェルの『ダフニスとクロエ』は完全に彼女の独壇場だった。彼女の奏でるフルートの音色は正確無比。加えて女性特有の優しく包容力のあるまろやかなな音色。ちょっとセクシーな音色でもある。この人は間違いなくフリーでも活動していける力量の持ち主なので、ぜひともいろいろなオケと共演してもらいたい。

というわけで、前半で帰らなくて正解の演奏会でした。おかげで、帰りも地元でビールを何杯も飲んでしまった。(笑)

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ミューザ川崎のNHK交響楽団

昨日(4日)、ミューザ川崎で開かれている「サマーフェスタカワサキ」のNHK交響楽団の公演に行ってきました。指揮は山下一史。司会進行は黒崎めぐみアナ。客席は満席。

演目
クレンゲル/自作主題による4本のチェロのための変奏曲
(チェロ:村井将、銀銅久弥、山内俊輔、桑田歩)
モーツァルト/ピッコロ四重奏曲イ長調(本来はフルート四重奏曲イ長調K.298)
ダマレ/白つぐみ
(ピッコロ:菅原潤、ヴァイオリン:山田慶一、ヴィオラ:飛澤浩人、チェロ:藤村俊介)
(※以上プレコンサート)

バーンスタイン/キャンディード序曲
ドビュッシー/クラリネットと管弦楽のための第1狂詩曲(クラリネット:横川晴児)
ホルスト/吹奏楽のための第1組曲変ホ長調
R.デューハースト/ブラジリア(トロンボーン:新田幹男)
V.ユーマンス/キャリオカ(チューバ:池田幸広)
バーンスタイン/「ウェスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス

最初に結論。プレコンサートが約30分、本演奏とおしゃべりで約1時間30分、これで料金はS席3000円・A席2000円と格安。場所はNHKホールでなく、日本のコンサートホールのなかでも最高の音響を誇るミューザ川崎。そして、演奏はNHK交響楽団。かなり楽しい気分を味わえたコンサートでした。

開演1時間15分前より行われたプレコンサート。曲目は普段はNHKホール北側ロビーで行われている「開演前の室内楽」で以前演奏されたものと同じ。最初のチェロ四重奏は会場がまだざわついていたせいか、ちょっと集中して聞けなかったが、二つ目のピッコロ四重奏は、北側ロビーで聞いたときの音とは全然違い、めちゃくちゃに素晴らしかった。菅原潤のピッコロはミューザ川崎のホールの3階席まで間違いなく響き渡り、また飛澤浩人の粘りのあるコシの強いヴィオラの音色が耳からお腹にまで伝わってきた。いや〜、このホールは室内楽でも全くノープロブレムなんだなぁ、と実感させられました。本当に凄いホールです。

さて、午後3時からは吹奏楽をテーマにした演奏。最初と最後のバーンスタインの曲ではオーケストラは100人以上の大編成。あまり広いとは思えない舞台に黒服姿のメンバーがいっぱいで、こりゃ楽屋は大変だろうなとまず思う。(笑)しかし、演奏の方はまったく手抜きをしません。指揮の山下一史はよほどバーンスタインがお好きなようで、オケばかりでなく余裕綽々で観客まで指揮してしまう。私はNYでバーンスタインが指揮する「ウェスト・サイド・ストーリー」を聴いたことがあるが、それに負けるとも劣らずの演奏だった。ただ、演奏中の「マンボ!」の掛け声はちょっと恥ずかしいのか、優等生的でペケでした。

そして、この日のテーマである吹奏楽だが、ソリストのみなさんは誰もが上手いの当たり前だが、なかでも、チューバの池田幸弘が奏でるチューバ独特の柔らかく優しい歌声のような音色は、ホール全体をふんわりと漂い、客席からはおそらくこの日最大の拍手をもらっていた。また、昨年からN響メンバーになった新田幹男のトロンボーンの音色も優美だった。新田は高校2年まではチューバ奏者で、高校3年からトロンボーンに転向したという。山下一史も「高校3年から始めて、いまN響ですか」と言っていたが、この話には吹奏楽をしている中高校生たちは勇気づけられたに違いない。

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宮本文昭指揮の東京都交響楽団

昨日(28日)、ミューザ川崎で開かれている「サマーフェスタカワサキ」の東京都交響楽団の公演に行ってきました。指揮はオーボエ奏者としての生活にピリオドを打ち、指揮者に転身した宮本文昭。この公演は指揮者として6月のJTホールでの管楽アンサンブルに続いて2回目。オーケストラの指揮は初デビューのようだった。ピアノはパリ在住の児玉桃。

演目
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
ラヴェル/ボレロ

ピアニストから指揮者に転じる人は枚挙にいとまがないが、オーボエ奏者から指揮者に転じた人はあまり聞いたことがない。ただ、“もぎぎ”ことN響首席オーボエ奏者の茂木大輔も指揮を行っているので、ひょっとすると今後は木管金管奏者から指揮者になる人が増えるかもしれない。宮本文昭はその先駆者的存在になるか。

最初は歌劇「魔笛」序曲。宮本文昭は指揮棒を使わない。あるときは両手をピアノを弾いているように、あるときは空手の型を行うように、あるときは社交ダンスをするかのように、少し腰を折り曲げて、体を前後左右に動かしてリズムをとりながら、オケを掌握しようとしている。彼は美しく透明感のある音をオケに求めているように聞こえる。それはどことなく汗をかいたあとに飲む清涼飲料のようだ。しかしがら、その音には私が好きなビールにあるコクやキレが感じられない。もう少しアルコール度がある音が欲しい。(笑)

2曲目はモーツァルト。この23番はモーツァルトのピアノ協奏曲でもっとも有名な作品だが、児玉桃はさりげなく非常にあっさり弾いてしまう。ちょっと拍子抜けだった。

3曲目はお目当てのボレロ。この曲では宮本は自分の感情を思いっきりオケにぶつけていく。あの誰もが知っているメロディをフルート、クラリネット、ファゴットとソロパートが変っていくが、宮本をそれをうまく誘導していく。東京都交響楽団のソリストにはかなりのバラつきがあったが、逆にチェロやコントラバスなどの弦楽器がこうしたバラつきをうまく補っていたのが印象的だった。特にコントラバス陣のしっかりした音程とリズム感は素晴らしく、彼らの力なくしては、最後の高揚を引きだすことはできなかったに違いない。

ボレロでの宮本の指揮ぶりは見事であった。彼の指揮からすると、こうした滑らかでリズミカルな曲が向いているのかもしれない。しかし、彼は長年ドイツに住んでていたのであるから、ベートーヴェンやブラームスといった正統派ドイツ音楽の指揮も聴いてみたいものである。今後の宮本文昭の指揮者生活に注目したい演奏会であった。

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N響「夏」2007公演

昨日(20日)は梅雨明け予定日なのに、東京は相変わらずの梅雨空でしたが、そんななかNHKホールでのN響「夏」2007公演に行ってきました。指揮はチェコ出身の新進気鋭のトマーシュ・ネトピル。ピアノは昨年の「第6回浜松国際ピアノコンクール」で優勝したアレクセイ・ゴルラッチ。

演目(※はアンコール曲)
モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調作品88
※ブラームス/ハンガリー舞曲第4番

アレクセイ・ゴルラッチはウクライナ出身の弱冠19歳。顔にはまだあどけなさが残り、背もさほど高くないので15歳〜16歳の少年にも見える。

第一楽章。始まってすぐのオケだけの演奏のところで、ゴルラッチは体を前後にゆっくり動かしながら、頭のなかで情景を描いているのか、それとも自分の感情を高めているのか、自分のリズムを作りだそうとしている。そして、ピアノ演奏に入ると彼は時には繊細に、時には荒々しく、音楽そのものを自分の世界に引き込んでいく。このピアノ協奏曲「皇帝」の第一楽章はきらびやかにとよく言われるが、彼は自分のもっている若さという特権でベートーヴェンに挑もうとしている。しかし、彼は決して背伸びをしているわけではない。ただ、没頭したいだけなのだ。彼には指揮者を見る余裕もないし、自分をいかに表現するかだけで精一杯なのだ。でも、若々しくていいではないか。

第二楽章。ここではゴルラッチの若さが露呈される。ベートーヴェンにしては甘美に書いた旋律を、彼は残念ながらまだうまく奏でることはできない。でも、彼は第一楽章同様一貫して真摯な姿勢でピアノと向き合う。

第三楽章。ゴルラッチは一転して自分の殻を破りたいが如く、激しく激しくピアノを奏でる。それはベートーヴェンが描くエネルギッシュな世界を破りたいという意志の表れであろう。彼はおそらくまだ自分のピアノに満足していないに違いない。もっともっとピアノが上手くなりたいという少しアマチュア(少年とでもいおうか)な面でベートーヴェンに向き合っている。それでもいいではないか。終演後の観客の拍手も明らかに「少年よ、その若さを忘れるなよ」という暖かいものであった。

それにしても、最近のNHKホールのピアノはよく鳴る。よく響く。そして、よく奏でる。ソリストがいいのか、指揮者がいいのか、オケがいいのか、ピアノがいいのか、調律師がいいのか。(ホールがいいことはない)。あの赤鬼ルドルフ・ブフビンダーのブラームス、名演奏だった清水和音のラフマニノフ、そして今回のゴルラッチ君の「皇帝」とNHKホールでのピアノ協奏曲に外れがない。こうなると、来年4月以降のAプロのピアノ協奏曲3連チャンがめちゃくちゃ期待される。

休憩を挟んでのドヴォルザークの交響曲第8番も非常に楽しめた。トマーシュ・ネトピルは1975年生まれとまだ若い指揮者だが、その指揮ぶりはとにかくダイナミックでエレガント。指揮者を野球の投手に例えるのは少し愚かかもしれないが、彼は背は高いがアンダースローの本格派投手という感じがした。往年の阪急ブレーブスの山田久志のように200勝投手になれるような資質の持ち主だ。現在、彼はヨーロッパの数多くの歌劇場でタクトをふっているようだが、彼のように直球も変化球も自在に投げられる指揮者はオケピのなかではなく、舞台の上でも大いに振る舞ってもらいたい。敢えて苦言を言わせてもらえれば、アンコール曲のハンガリー舞曲の指揮ぶりはちょっとノリノリ過ぎでした。でも、これもドボ8を指揮を終えて嬉しさからきた若さなんだろう。

とにかく若さが全面に表れた、N響にしては珍しいみずみずしい演奏会だった。おかげで、帰りの飲み屋の酒も美味かった。

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NHK交響楽団 アシュケナージ最終公演

昨日(29日)梅雨空の下、NHKホールでのN響第1597回定期公演に行ってきました。指揮はこの公演をもって音楽監督を退任するウラディーミル・アシュケナージ。彼は2009年よりシドニー交響楽団の音楽監督に就任予定になっている。

演目
ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調「田園」
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調

この日のNHKホールはなんか異様な雰囲気に包まれていた。チケットは完売。3677人も入るホールが2日連続完売なんて過去にあるのだろうか。理由はアシュケナージ最後の指揮ということもあるが、演目がベト6&ベト7ということもあるのではないだろうか。『のだめカンタビーレ』で一躍有名になったベト7。会場は若い聴衆がいっぱいである。先日の『N響★カンタビーレ』は休日の昼公演ということで家族連れが目立ったが、この日は音楽を専攻している学生や若いカップルがロビーに溢れていてとても華やかだった。いいです、こういう若い聴衆が増えたこと。先週のラフマニノフに続いて、N響の敷居も低くなったんだなあ、と実感した。

しかし、この日の演奏会には梅雨というか湿度という難敵がいた。NHKホールはもちろん空調はしっかりしている。それでも、客席は満席で蒸し蒸ししている。ビニール袋に入れているとはいえ濡れた傘が会場にあるので湿度は簡単には下がらない。楽器を少しでもかじったことがある人なら周知のことであるが、湿度は音の響きを悪くする。特に弦楽器は音が伝わりにくくなる。木管や金管にしても楽器内に水滴が溜りやすくなり、微妙な音の調整が難しくなる。もちろんティンパニーなどの太鼓も張りが悪くなり音が鈍くなってくる。

こうした最悪の状況下でベートーヴェンの第6番『田園』が演奏されはじめた。

第1楽章。あの有名なメロディが聞えてくる。誰もが息を飲み込み、その音色を聞く。案の定、弦の音色が悪い。特にヴァイオリンが・・・。演奏そのものは一糸乱れていない。テンポもリズムも悪くない。でも、あのメロディがモヤっとした空気のなかをさ迷っている。とても「いなかに着いたときの愉快な気分」という楽章名とはほど遠い気分であった。

第2楽章。ここは金管と木管の聴かせどころなのだが、音色がくすんでいる。「小川のほとり」で小鳥たちのさえずりを表現するはずなのだが、その小鳥がなんか鳥カゴに入っているようで、会場内には見えないバリアーが張られているのではないかと思ってしまう。そんな決して良いといは言えない雰囲気のなかで、アシュケナージは体を大きく揺すって、音を引きだそうとしている。

第3楽章「いなかの人々の楽しいつどい」。冒頭にホルンが高らかに鳴り響き、そのあとにチェロやヴィオラがメロディを奏でていく。やっとオケにエンジンがかかってきたのか、N響メンバーも湿度と楽器の調整になれてきたようだ。やっと本来のN響の力を発揮してきた。聴衆側も安心して聴いていられるようになってくる。やっぱしこうでなくちゃ。そして、「雷とあらし」の第4楽章に突入していく。外が雨だからというわけではないが、音がしっくりくる。

第5楽章「牧歌。あらしのあとの喜びと感謝」。来ました、来ました、N響ならではの低音部の響きと弦の一体感。木管も金管も雲の隙間から光を照らす光明を想像させるような音色を奏でる。アシュケナージならでのロマンティックな表現も伝わってくる。そして、最後は静かにして厳かな音色が会場内を覆っていた霞を消していった。

名演奏とまではとても言えないが、非常にまとまりのある演奏だった。パチパチパチ。

休憩時間を挟んで、交響曲第7番。最後の第4楽章だけは大いに盛り上がりましたが、それ以外はテキスト通りのごく普通の演奏。『N響★カンタビーレ』のときは若々しいN響を聴けたと書いたが、この日のN響は威厳こそ感じませんでしたが、我々は正統派なんだぞという妙なプライドを感じてしまった。今度はN響自体が妙なバリアーを作ってしまって、ちょっと残念でした。

前音楽監督のシャルル・デュトワは繊細でちょっとお洒落な音色をN響にもちこんだ。それに対して、アシュケナージはロマンティックにしてお茶目な音色をN響に求めてきたような気がする。日本のオケのほとんどはドイツ的な重厚な音色を志向している。N響もその一つであろう。ただ、この二人の音楽監督が持ち込んだ刺激は新鮮であり、ある意味挑発的だったのではないだろうか。次の音楽監督はまだ誰になるかわからないが、できれば今度は重厚にして明るく開放的な音色のサウンドをもった人になってもらいたい。そのためには北米のオケで指揮者として経験のある人を招聘してくれないかなぁ、と密かに期待している。

最後に、アシュケナージさん、楽しい音楽を本当にありがとうございました。ブラボー!ブラボー!ブラボー!

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名演奏だったN響 & 清水和音のラフマニノフ・ピアノ協奏曲第3番

昨日(23日)NHKホールでのN響第1596回定期公演に行ってきました。指揮は来週の定期公演でN響音楽監督を退任するウラディーミル・アシュケナージ。ピアノは清水和音。清水は1981年に弱冠20歳でパリのロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門で優勝。翌年にはN響と初共演するなど、20年以上にわたって国内外で活躍している日本を代表するピアニストのひとり。

演目
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調
チャイコフスキー/交響曲「マンフレッド」

この日のNHKホールは普段の高齢者だらけの定期公演とは違い、若い女性の実に多いこと。土曜にもかかわらず制服姿の女子高生までいる。さすがラフマニノフである。もちろん私のお目当てもラフマニノフだが、とりわけアシュケナージの指揮に興味津々だった。というのも、以前「ラフマニノフのピアノ協奏曲全集はおそらく彼(アシュケナージ)の右にでる者はいないほど素晴らしい」と書いたように、アシュケナージはラフマニノフを当代随一熟知している音楽家である。そのアシュケナージがピアノを弾かないまでも、どう指揮するのかを期待しないわけにはいかない。

第1楽章。冒頭のソナタの部分、清水和音は蚊の鳴くような弱音から始める。か弱い音が観客の息を止めて、場内には一瞬にして張りつめた緊張感が漂う。その音色は甘美でない。耽美でもない。少し機械的な音にすら感じる。しかし、指揮のアシュケナージは全く動じない。ファゴットやクラリネットの音色を優しく導いて、ピアノの音色を引き立ていくようにする。そして、ロシア正教会の聖歌から採られたとされる主旋律のピアノのソロに入ると、清水のピアノは奏でる、響く、そして歌う。いや〜、ラフマニノフです。超絶技巧もなんのその、ピアノの優しい音色が無味乾燥としたNHKホールに花の香りを漂わせるように鳴り響いていく。観客は完全にラフマニノフの世界にうっとりだ。私の前に座っているお姉さんは早くもハンカチで目頭を抑えている。

第2楽章。ここは間奏曲だ。ピアノの腕の見せどころである。清水は哀愁たっぷりに、そしてロマンティックにラフマニノフの世界を奏でる。いや〜、うっとりしてしまう。

第3楽章。冒頭の行進曲風の旋律では清水が奏でる音は繊細であるが少し力強すぎるきらいがある。しかし、アシュケナージはここでもビクともせずオーケストラをコントロールして、清水を少し抑えていく。そして、クライマックスでは今度は馬のたずなを弛めるではないが、アシュケナージは清水に思いっきり弾かせる。二人の呼吸が完全に合っている。清水もアシュケナージにサインを送るかのようにピアノを返していく。凄い凄い。ちょっと興奮してくる。アシュケナージの指揮に期待したかいがあった。目論みが当たった。私の涙腺もゆるんできてしまう。

チャイコフスキーの交響曲『マンフレッド』終演後、若い女性が舞台下に駈けよってアシュケナージにプレゼントを渡した。芝居などではよく見かける光景だが、N響のコンサートでは初めて目にした。アシュケナージの指揮を揶揄したり快く思わないことを言う人がかなりいるが、私はプレゼントをもらって軽く投げキッスをするお茶目で愛嬌のあるアシュケナージが好きだ。指揮者としての力量は別にしても、彼はこの3年間にN響に大きな刺激を与えたと思う。3年間でチャイコフスキーの交響曲をすべて指揮したが、今思えばラフマニノフの交響曲と協奏曲もすべて指揮して欲しかった。

話は少しずれるが、私はこれまでDVDの録画再生機をもっていなかった。2〜3週間前から買おうか買うまいか迷っていた。しかし、昨日の演奏会を聴いているうちに、買おうと120%決心した。それはこの演奏が近々BSおよびハイビジョンで放送されるのだから、それを録画して再度聴いてみたいと思ったからである。こんな衝動にかられるぐらいだから、間違いなく名演奏会であった。もうひとつ余談だが、ちょっと興奮した私は家路につく前に下北沢の友人の店で一杯、そして、地元の学芸大学のお店で一杯飲んでしまった。こんなことも久しぶりである。

追記:チャイコフスキーの交響曲『マンフレッド』も良かった。普段はあまり感心しないトランペットやトロンボーンなどの金管パートが特に良かった。夏の吹奏楽が楽しみになりました。

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NHK交響楽団 東京文化会館6月公演

昨日(13日)東京文化会館でのN響東京文化会館6月公演に行ってきました。指揮は今月いっぱでN響音楽監督を退任するウラディーミル・アシュケナージ。チェロは今回が日本初お目見えのデーヴィッド・コーエン。

演目
デュカス/交響詩『魔法使いの弟子』
チャイコフスキー/ロココ風の主題による変奏曲
ルーセル/バレエ組曲『バッカスとアリアーヌ』第2番
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」

今回のお目当てはチャイコフスキーのチェロ変奏曲。ソロは弱冠22歳にしてフィルハーモニー管弦楽団の首席チェリストに就任したデーヴィッド・コーエン(現在は27歳)。そして、アシュケナージによるバレエ組曲『火の鳥』。私はバレエ好きでもあるのですが、バレエ音楽のなかでもこの曲はお気に入りのひとつです。幻惑的というか幻想的でドラマティックだからであろう。

さて、デーヴィッド・コーエンによる『ロココ風の主題による変奏曲』だが、この曲を聴くのはおそらく始めて。ちょっと難解でテクニックがいる感じの作品。童顔で子供っぱいマスクのコーエンはそんな曲を目茶苦茶に甘く奏でる。その甘さはお菓子のような甘さではなく、マンゴーとか果物に入っている糖分のような甘さだ。彼はとにかく素直で、汚れを知らないような純粋な音色を奏でる。そして、これがとにかく甘い。私にはちょっと勘弁したくなるほどだが、もちろんテクニックも凄腕なので、この音色にうっとりしてしまう女性もいるに違いない。今日、ロストロボービッチのような世界をまたにかけるチェリストは少なくなったが、彼にはその素質が少し見え隠れした。今後がちょっと気になる人であった。

さて、休憩時間を挟んでルーセルの『バッカスとアリアーヌ』第2番。この曲は間違いなく始めて聴いた。この『バッカスとアリアーヌ』第2番はバレエ公演(初演は1931年)は成功しなかったのに、音楽の方が残ったという希有な作品とのこと。そして、第1幕を第1番、第2幕を第2番として演奏会用組曲として演奏され続けているそうだ。で、この音楽はめちゃくちゃにいい。詳しい音楽形式はよく解らないが、メロディ、リズム、テンポすべてが洗練されていて、とてもパワフルでエネルギッシュ。正直、バレエ音楽という感じはしない。色彩美豊かな音色がいくつも重なりあう交響曲の様相。始めて聴いたということもあり、ちょっとお得な気分になってしまった。アシュケナージもノリノリで指揮をしていて、最後には指揮台の手すりに寄り掛かり「ああ、楽しかった」というおどけた表情を見せたのが印象的だった。

そして、メインディッシュの『火の鳥』。この曲はオリジナルのバレエ音楽と、3種類の組曲(1911年版、1919年版、1945年版)があり、今回はもっともポピュラーな1919年版の演奏。アシュケナージはこのバレエの名曲を、それこそ炎のように奏でようと試みるが、どうもオケはそれについていけない。というのも、今回の木管と金管メンバーの半分近くがN響メンバーのようでなかっただろうか。それとも前曲の『バッカスとアリアーヌ』でエネルギーを使い果たしてしまったからだろうか。もちろん私が求めている幻想的な音色もどこからも聞えてこない。う〜ん、完全に空回りしている。こうなると、指揮者とオケの関係はミスマッチになって音が噛み合わず分散してしまう。とういうわけで、終演後のアシュケナージの顔は先程と違って「ああ、疲れた」という感じだった。

途中までは気分よく過ごせていたのに、最後の最後で消化不良の演奏会になってしまった。残念。
では、また〜。

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