更新日:6月12日
●検察審査会取扱審査事件数検察審査会は制度が発足した1948年より1998年末までに、全国で131,083件の申立てを審議している。 そのなかの12.3%にあたる16,025件に対して起訴相当または不起訴相当の議決をしている。そしての残りの51.9%の67,734件に対して不起訴相当の議決を、35.8%の46,762件に対して審査打切りもしくは申立却下の採決をしている。
審査した事件で多いものは交通事故による業務上過失致死・同傷害、詐欺、文書偽造、暴行・傷害・傷害致死、職権乱用などが多い。最近は強姦、出入国管理法なども多くなっている。後に私が審査に参加さいた事件を少し詳しく書くが、詐欺が実に多いのには正直驚いた。
●主な有名事件審査
これまで検察審査会が審査した有名な事件は下記のようなものがある。
古いところでは造船疑獄事件(東京第一検察審査会)、近江絹糸事件(大阪第一検察審査会)、サリドマイド薬禍事件、水俣病事件(熊本検察審査会)など。そして、記憶にある事件としては甲山事件(神戸検察審査会)ホテル大東館火災事件(沼津検察審査会)、日航ジャンボジェット機墜落事件(前橋検察審査会)、中華航空機墜落事故(名古屋第二検察審査会)、なだしお航泊日誌改ざん事件(横浜検察審査会)、信楽高原鉄道列車事故事件(大津検察審査会)、東京佐川事件、薬害エイズ事件、サッチー学歴詐称事件(いずれも東京第一検察審査会)、片山隼くんひき逃げ事件(東京第二検察審査会)があり、社会的注目を集めた事件が意外に数多くある。●東京第1検察審査会におけるサッチー事件審査
1996年10月の衆院選に出馬した野村沙知代が、当選を得る目的で、名刺および選挙公報などに「コロンビア大学留学」など虚偽の経歴を記載して配ったり、記者会見で同様な発言を繰り返して、公職選挙法違反(虚偽事項の公表)容疑で告発された事件。
この件について、東京地方検察庁は嫌疑不十分の裁定をくだしたが、女優の浅香光代さんらより不服申立てが行われ、東京第一検察審査会で審査が行われた。
そして、東京第1検察審査会は1999年10月12日に、出生場所と結婚の時期については検察側の不起訴処分を相当としつつも、「留学の用語の多義性を考慮しても、一般人の常識からみれば、本件では留学は虚偽と判断するのが相当である」と指摘。さらに、検察側が留学を記載した名刺を応援弁士に配布した点についても、「捜査を尽くせば、さらに複数の人に配った事実も確認できた可能性があった」として「一般常識から見れば、(公表した経歴は)虚偽にあたる」と結論。東京地検の不起訴処分(嫌疑不十分)は不当だとする議決をした。
この議決を受けて 斉田国太郎・東京地検次席検事は「検察審査会の議決を踏まえ、不起訴不当とされた部分についてさらに然るべき捜査を実施する」としたが、公訴時効が19日と迫っていたために、起訴はされなかった。しかし、野村沙知代はその後の記者会見で留学について虚偽であったようなニュアンスの釈明をした。
●名古屋第二検察審査会における中華航空機墜落事故審査平成6年4月に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗して、墜落。乗員・乗客264人が死亡、7人が負傷した事故に関して、同航空機の機長および副操縦士(いずれも死亡)に対して的確に訓練を行わなかったと、名古屋県警から書類送検されていた中華航空の管理監督者である副社長ら4人に対して、検察官は個人的な刑事責任(業務上過失致死)を問うのは困難と判断して嫌疑不十分の裁定をした。
この裁定に対して不服申立てを受けた名古屋検察審査会は、事故の直接的原因は機長と副操縦士の誤操作によるミスとし認めたものの、単純にこのふたりの過失だけによるものとは断定できず、機長らに対する管理監督の中華航空の副社長らにも責任があると認め、不起訴不当の判断を下した。
この裁定は被疑者が日本在住者ではないので、捜査は難しいとわかっていながらも、航空機の安全運行に寄与するために更に捜査するよう要望するという、検察への警鐘を示したものであり、国際問題を避けて通ろうとするこれまでの検察の姿勢に一石を投じた画期的な議決であった。