ぶらり温泉ひとり泊

東山温泉 向瀧

http://www.mukaitaki.com/


会津の奥座敷、東山温泉にある由緒ある旅館。建物は国の登録有形文化財第1号になるほどのりっぱな木造数寄屋建築。傾斜地を生かしたた回遊式日本庭園を囲むように造られた建物は尊厳な佇まいである。

私が宿泊した部屋は2階の百合の間だが、ここのホームページにはすべての部屋の見取り図および景観が詳細に掲載されているので、そちらを参照にしてほしい。

宿に到着後、館内を番頭さんに案内していただいたが、大正初期に造られたという“離れ”は宮内庁の指定で造られたというから半端なものではない。厳格な書院造はどことなく雅な香りを漂わせている。この“離れ”には専用の茶室までついている。また85畳の広さという“大広間”の天井は今では再現不可能といわれる「会津桐の柾目一枚射板の格天井」という造りで、京都島原の遊廓・角屋の広間に似ていて一見の価値がある。

館内には野口英世をはじめとした郷土の著名人、伊藤博文をはじめとした明治の元勲などの各界著名人の書がかけられている。ちなみに、東山温泉にはいくつの老舗旅館があるが、向瀧は明治新政府の重宝され、新滝はもともと藩主松平家の別荘だった関係から、会津藩ゆかりの人や文人に重宝された。

内風呂は大理石造りのきつね湯(男女)と御影石造りのさる湯(男女)の2つ、そして貸切風呂が3つで、露天風呂はない。今日の旅館は客寄せのために露天風呂を作らざるを得ないが、こうした昔ながら風情がある旅館に露天風呂は必要ない。そもそも露天風呂なんというものは源泉近くに自然にできるものであって、旅館が造るものではないのだから。

お湯の泉質は旧泉名では含食塩石膏芒硝泉というもので、白濁色のにごりは薄いものの、ほんのりと塩分が肌にピリッとくる心地よいお湯である。ちなみに効能はリュウマチ、動脈硬化、きりきず、やげど、皮膚病、胃腸病、婦人病、神経痛、筋肉痛などと書かれていた。

料理は明治新政府や宮内庁に縁が深かった関係があるかどうかはわからないが、湯葉がでてきたり、味付けもあっさりしていて京風料理といった趣き。写真を撮りそこにねたが、前菜、メインディッシュ、ご飯&みそ汁と3回に分けて部屋に食事をもってきてくれる。おかずの量は決して少なからず多からずで、最後に会津コシヒカリのご飯をしっかりと味わえる。昨今のおかずがやたらいっぱいの旅館の料理とは違い、慎ましやかな会津の食事を楽しんでいただだこうという板長の心意気が伝わってくる夕食だった。

(2004年12月27日逗留)